幸せをくれた君に
彼女のグラスと俺のグラスがカチンと澄んだ音をたてて交わる。


妙に心に残る音だった。


彼女は一口飲むと満足そうに微笑んだ。


「美味しいわ。美馬さんもどうぞ」


そう勧められて口にしたワインの味は、確かに、ほどよい甘さが舌に心地よく残る素晴らしいものだった。


ワインの知識が皆無の俺ですら最高級品だと分かる代物だ。


「確かに美味いな」


「でしょ!」


なんて何気ない会話を交わしながら、俺と美香との間に流れる空気は意外と穏やかなものだった。


美香もあの頃より、ずい分と大人のいい女になっていた。


「父は美馬さんの会社をかっているの。さきほどの社長さんの経営手法は見習いたいってよく言っているわ」


「君の父親の黒川専務も、いずれ黒川物産を継ぐのだろう?」


「…そうね、いずれはね。けど、まだまだ勉強中みたい」


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