幸せをくれた君に
本当は理沙と過ごす予定だったクリスマスイブの夜。


俺は美香にせがまれて彼女と過ごした。


美香と再会してから半年以上、理沙にはばれることなく順調に事は運んでいるはずだ。


そのはずなのに俺のなかに湧き上がる不安感。


「情けない顔」


美香はそんな俺をみてクスリと笑った。


別に馬鹿にしているような笑いでもなく、どこか寂しげなそんな表情。


「美香……」


俺は思わず彼女の頬に手を伸ばす。美香は避けることなく俺の手を受け入れる。


「美馬さんの手は温かいわね。神崎さんがうらやましいわ」


彼女はそんなことを呟きながら、まるで猫のように気持ち良さそうに目を細めた。

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