光の思い出 - happiness&unhappiness -
私の怒りの迫力に圧倒されて、孝太は困ったように眉を八の字に曲げた。
どうして孝太がそんな顔をするの。困っているのは私の方だ。嫌な思い出の場所で再び怒っている自分がよく分からなくなる。
狂い出した歯車は止まらない。
「私はただ、浮気なんかしてほしくなかった。ごめんって、ただその一言だけでも言ってくれたのなら、許せたかもしれないじゃん。それにそんなふうに思ってくれてたなら、簡単に別の女の子になんか触れてほしくなかった。……ただ、それだけだよ」
孝太が飽き性なら、私は凝り性なんだ。むしろただの、執着心が強すぎるだけ。
孝太のことをろくでなしなど思いながらも、嫌な思い出の片隅で淡く光っている幸福な思い出に縋り付いている。
イルミネーションの光を見飽きないように、ずっと孝太のことを見続けてきたぐらいなのだから……。
あの日の光景がフラッシュバックする。その途端に眼球の奥がぎゅっと締め付けられるみたいに熱くなって下を向く。
涙が出るかと思ったけれど、こいつのために流す涙はもう持ち合わせていないみたいだった。
「……ごめんな」
俯いた頭の上に、大きな手のひらを乗せられる。孝太にこうやって触れられたことなんて、かつてあっただろうか。
思えば手を繋ぐ以外、孝太はあまり触れようとしてこなかった。近付く距離もいつもたどたどしくて、何だか手探り状態みたいだった気がする。
――ああ、そうか。
こんな最低なやつなりに、一生懸命、優しく接しようとしてくれていたんだ。