光の思い出 - happiness&unhappiness -


「普通飽きるだろう。ずっと同じように光ってるだけだし」

「それはそうだけど……。不思議とね、ずっと見てたい気分になる」


 ここまで言い切った私に孝太も困り果てたらしく、それ以上は何も言ってこなかった。だけど無理矢理歩こうとするわけでもない。

 代わりに繋いでいた手を、そのまま孝太のコートのポケットに突っ込まれた。

 カイロが入っているポケットはとてもポカポカとしていて温かい。

 顔を覗き込むと、照れた顔がふにゃりと笑ってくれた。

 だから、信じていた。この人は私が立ち止まっていても、ずっと隣に居てくれる人なのだと。

 移りゆく光の幻想の中に、孝太との未来を夢見たぐらいだった。



 でも孝太と別れたのは、デートをした翌日のクリスマス。

 原因は孝太の浮気現場を、皮肉にも自分の目で目撃してしまったから。


 私は前日に孝太と見に行ったイルミネーションを、次の日も家族と一緒に見に来ていた。家族に誘われたときに、断ればよかったんだ。昨日見に行ったからって。

 でも結局は見に行った。あの光のツリーに、まるで呼ばれているみたいに。

 だけどそもそもそれが間違いで、あのツリーの前で、孝太が私とは違う女の子と仲良く寄り添っているところを見てしまったんだ。

 私が知らない女の子の肩を抱き寄せて、楽しそうに2人でツリーを眺めていた。おまけに公衆の面前だというのに、キスまでしていた。私とはまだしたことないくせに。

 悲しいというよりもムカついたという気持ちの方が大きい。

 家族の存在なんて忘れてしまって一目散に憎い2人のもとまで駆け寄り、その勢いのまま孝太に右ストレートパンチをお見舞いしてやった。


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