雪の足跡《Berry's cafe版》
「ユキ、八木橋さんには連絡したの?」
「あ、ううん……。技術選の最中だろうし」
「心配してるんじゃないの?」
私のことなんて、本当に心配してるんだろうか。母や叔父の手前、何かあったら面倒だと思ってるんじゃないかなって。
「め、メールぐらい打っとこうかな」
母は、そうよ、後でちゃんと電話もしなさいね、母さんも八木橋さんとお話ししたいし、とニコニコしながら言った。
「えっ?」
「お礼を言わないとね」
「あ、うん」
母は、何慌ててるのよ、と笑いながら言う。私は携帯を徐に取り出し、八木橋にメールを打つ。一言、着いたから、とボタンを押す。なんだかぶっきらぼうな女だと言われそうで、無事着いたから、にする。それでも足りない気がして、『無事着いたから。技術選頑張って』、という文面にした。
食事を終えて荷物を片付ける。荷物の中にはあの水色の小箱も入っている。部屋でこっそりと開ける。二組のピアス。一つは直径3センチくらいの18金のフープピアス、1月の誕生石のガーネットや淡いピンクやエンジ色のスワロフスキーが通されている。暖色系の深いベリー色でかと言って甘すぎず、派手すぎず、休日に付けるのにちょうどいい雰囲気のピアスだった。もう一つは直径1センチは無い雪の結晶に所々小さいダイヤがあしらわれていて、ほんの少しでも揺らすとキラキラ輝く。多分人工ダイヤではなく、一般のダイヤ。硬度が違うから光り方も異なる。シンプルなデザインで仕事にも付けられると思った。