雪の足跡《Berry's cafe版》

 指定されたレストハウスに着くと手を挙げてくれたのは菜々子ちゃんの父親だった。そこに向かう。直に八木橋さんもいらっしゃっいますので、と母親に着席を促された。席は今朝と同じ、父親の隣に菜々子ちゃんが掛け、向かいに母親が座る。私は菜々子ちゃんの隣に座るのも嫌で母親の隣に掛けた。


「ふんっ!」


 向かいに掛けた私を見るなり菜々子ちゃんはそっぽを向いた。


「なっ……、私が何をしたっていうのよ!」
「ヤギせんせと同じお洋服を着て、すとーかーじゃないの??」
「す、ストーカー??」
「オバサン、モテないからそういうことしてるんでしょ?」
「モ、モテない?? あのねっ」


 私が思わず席を立った瞬間だった。八木橋が菜々子ちゃんの背後にいた。


「っ……」


 八木橋はクスクスと笑っていた。私は気まずくて椅子に座る。八木橋に気付いた菜々子ちゃんは上目遣いに八木橋を見上げ、せんせ、どっちに座る?、菜々子の隣?、それともお姉さんの隣?、と言った。


「お、お姉さん……」


 八木橋が来た途端に私をお姉さんと呼んだ。豹変ぶりに呆れた。


「ね、菜々子?、それともお姉さん?、せんせが選んで」


 八木橋は鼻の下をデレデレと伸ばし、菜々子ちゃんの隣の椅子に手を掛けた。菜々子ちゃんは横目で私を見る。
< 176 / 412 >

この作品をシェア

pagetop