雪の足跡《Berry's cafe版》

 菜々子ちゃんは八木橋と手を繋ぐと頭を八木橋の腕にもたれ掛けた。


「……ヤギはカツ丼とチョコケーキでいい?」
「ああ。悪い」


 食事を買いに席を立つと父親と母親もやって来た。5人分の食事を買い、席に戻る。見たこともない優しい笑顔の八木橋と目をキラキラとさせる菜々子ちゃんに正直妬けた。食事を始める。皆で今日までの試合の労いをする。菜々子ちゃんのご両親も技術選を見たのは初めてで興奮が冷めやらぬようだった。菜々子ちゃんはおこさまランチに盛られたポテトをフォークに刺し、八木橋の口元に持っていく。八木橋はデレデレとそれを食べる。カツ丼を食べ終えるとチョコケーキに手を付ける。ポテトのお礼だと菜々子ちゃんに一口差し出す。


「……恋人みたいじゃない」
「せんせと菜々子はほんとの恋人だもんっ」


 ね、せんせ!、と菜々子ちゃんが言うと八木橋は優しく笑う。

 皆が食べ終わり、このあとの行動の話になる。菜々子ちゃん一家はひと滑りした後、帰るようだった。


「菜々子、せんせと滑りたい」
「ごめん、これから閉会式があるから」


 菜々子ちゃんを宥めるように八木橋は言った。せんせ、菜々子にごあいさつして、と頬を出すと八木橋はその小さな頬にキスをする。なんの躊躇もなくすんなりキスする八木橋にムカついた。


「ほ、ほんとの恋人はほっぺじゃなくて唇にするのよっ!」
「じゃあ菜々子もせんせの唇にチューする!」


 菜々子ちゃんは座っていた八木橋の膝によじ登り、八木橋の唇にキスしようとした。

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