雪の足跡《Berry's cafe版》

 もう目も当てられない。冷や冷やしていると菜々子ちゃんの体がフワリと浮いた。八木橋が菜々子ちゃんの脇の下に手を入れて抱き上げていた。


「ほんとのチューは大人になってから」
「大人って?」
「うーん、二十歳かな」
「ハタチ??」


 20歳だよ、と父親がフォローする。


「ホーリツは16歳からケッコン出来るってパパが言ってた」
「じゃあ16歳でもいいよ」
「あと……10歳?」


 八木橋は菜々子ちゃんを膝に下ろした。


「菜々子ちゃんが大人になって、本当にヤギせんせのお嫁さんになったらチューしようね」
「うんっ!」


 菜々子ちゃんはにこにこして八木橋の胸に抱き着いた。私は胸を撫で下ろしつつも、そんな調子のいいことを言って大丈夫なんだろうかと不安になった。

 そして皆でレストハウスを出る。八木橋は応援に来ていただいて、と菜々子ちゃん一家に礼を言う。父親は、また来シーズン伺いますので菜々子のレッスンをよろしくお願いします、と頭を下げた。


 3人を見送ると、不意に八木橋と二人になる。


「一緒に滑るか?」
「へ……? だって閉会式は?」


 表彰台に登る訳じゃねえし、いいだろ、とズカズカと歩き出した。

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