雪の足跡《Berry's cafe版》

 そうして3度目のお代わりに席を立つと柏田さんに止められた。


「青山さん、お腹壊しますよ」
「ぜ、全種類制覇しないと後悔するから」
「全種類?」


 そうです全種類、と言うと柏田さんは変な顔をした。


「全種類、という割にはさっきからチョコケーキばかりですよ」
「こ、これから制覇するんです」


 うっかりした。八木橋を忘れようとこだわるあまりチョコばかり食べていた。慌てて違うケーキを取りに行く。抹茶ムース、ロールケーキ、シトラスゼリー。席に戻る。


「青山さん」
「はい」
「来週、ドライブに行きませんか?」


 そろそろ高原も新緑の季節ですし、と柏田さんは言った。ドライブ。今度こそうちまで迎えに来る。柏田さんも歴とした大人の男性。慣れた手つきで車内でキスしたりするんだろうか。でもいい。柏田さんの過去の女性は気にならない。八木橋の時みたいに元カノの存在に震えることなんてないと思った。


「……はい」


 柏田さんはホッと胸を撫で下ろした。場所は何処にしましょうか、と用意してきたのか地図を広げた。ドライブともなれば密室に二人きり。突然狼にはなりそうもないタイプだけど、少し躊躇してしまう。仮にこのドライブで何も無くたって、いずれはこの人と抱き合う。

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