雪の足跡《Berry's cafe版》

 その夜、私は胃痛に襲われた。ミニコース仕立ての料理を食べた後に小振りとは言え20個以上のケーキを平らげた。当然の結果。携帯が鳴る。画面を見るとスキースクールからの号外メルマガだった。お花畑で記念撮影と題されたメルマガ、読まずとも内容は想像出来た。


「どうせ菜々子が写ってるんでしょっ、痛っ……」


 胃が痛くてベッドの上で体をくの字に曲げながら画面をスクロールする。菜々子の他にも可愛いドレスを着た女の子や戦隊キャラのコスプレをした男の子など、それぞれにスナップ写真を撮っていた。


『こどもの日イベントで衣装レンタル割引。親子でこんな記念写真も!』


 スクロールする。タキシードを着た八木橋とピンクのドレスを着た菜々子が菜の花畑に座って手を取り合っている。


「親子じゃないし」


 もし妊娠が順調で仮に女の子だったとして恋雪が生まれていたら、こんなふうに親子で写真を撮っていたかもしれない。大人しくて可愛い女の子に育てばいいけど、生意気な菜々子や気の強い私のような女の子だったらと思うとゾッとした。きっと嘘泣きして八木橋に泣き付いて、八木橋は可哀相だろと恋雪を庇う。

 メルマガは、これから温室の薔薇、庭ではポピー、ラベンダー、夏にはひまわり、秋はコスモスと花が続きます、スクール利用者に衣装レンタル代写真集代を割引します、申し込み時にひとことお伝えください、と書かれてメルマガ担当酒井と締め括られていた。

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