雪の足跡《Berry's cafe版》

「どうしても会いたくてご自宅に電話して。お母さんにピシャリと断られましたが諦めきれなくて」


 で、ストーカーのように薬局に押しかけた。駄目で元々、でも私は快く食事をしてくれた。初めて会うのに年収を聞かなかったのも好印象だった。


「あの時は柏田さんがアイドルの話を」
「でも楽しそうに聞いてくれた」


 ますます柏田さんは私を気に入った。そして2度目のオーダーバイキングでの食事の時、私は結婚の条件を上げた。あれ程嫌がっていた条件、なのにそれを尋ねられて嬉しく感じた。


「僕との結婚を考えてくれてるんだなと思ってね」


 私は自分を最低だと思った。年収こそ気にしなかったけど、婿入りや仕事を続けたいと結婚の条件を上げた。条件だけで柏田さんと結婚しようとした。


「ごめんなさい」
「ううん、謝らないで。僕も反省した。合コンで知り合った女性の中にも僕との結婚を真剣に考えてくれた人もいたんじゃないかと思う。それを頭ごなしに僕の収入が目的だなんてね」


 だから今までうまくいかなかったって気付いたよ、と柏田さんはハンドルを握る。

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