雪の足跡《Berry's cafe版》

 式が終わるまで見届けた後、私は砂利の歩道を登った。元カノと話は済んだだろうか、不安はあったけど私の心は何故かスッキリとしていた。やり切った達成感にも似た感情。もし万が一八木橋が元カノを選んだとしても、それでもいいって思った。その選択で八木橋が幸せならそれでいいって。


「ん? これ……」


 歩道の脇の芝生の植え込みに白い携帯が落ちていた。八木橋と同じ型のそれ。でも八木橋の携帯には付いていないストラップが付いていた。しかもピンク系のビーズ、男性の物ではないのはすぐに分かった。きっと来園者の誰かが落としたんだろうと思った。

 フロントに届けようと拾い上げる。その拍子に指が画面に触れて、待受画面が現れた。


「あ……」


 あの画像だった。八木橋と元カノがリフトで寄り添う画像だった。ということは多分元カノの携帯、きっと転んだ拍子に落としたんだ。

 届けようとフロントに向かう。いかにも来園者の誰かが届けたように見せ掛けようと思った。医務室に行って直接手渡しなんてしたくない。八木橋が泣いてる元カノに優しく寄り添う場面も見たくないし、私だって勝ち誇ったように元カノの前に立ちたくもない。

 型も色もお揃いの携帯、八木橋と寄り添う画像。羨ましかった。私はまだ八木田橋と写真を撮ったことも無かったし、お揃いで何かを買ったことも無かった。少し、妬ける。


「すいません。これ、歩道に落ちてました」


 玄関に立っていたベルスタッフに声を掛けた。スタッフは私に礼を言い、フロントに向かおうとした。

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