雪の足跡《Berry's cafe版》

「……?」


 そういえばこないだ、八木橋は何故、チョコケーキを注文しなかったんだろう。私はお腹いっぱいだと追加注文を断った。なら八木橋の好きなチョコケーキを頼めばいいのに。


「まさか……」


 八木橋は気付いてたんだろうか、私が遠慮して追加しなかったことを。それを気遣って私の好きなチーズケーキを注文した。しかも一つだけ。それを半分ずつ食べた。八木橋がフォークで一口すくっては私の口に放り込んだ。

 目の前のコーヒーから上がる湯気がやけに揺れる。鼻水が垂れそうになって鼻を啜る。チーズケーキが歪んでいく。テーブルに水滴が落ちる。私はボロボロと泣いていた。


「ヤギ……」


 食べるなら一人じゃなくて二人、八木橋と馬鹿言いながら食べたい。


「ヤギって言ったな」


 空耳まで聞こえてきた。重症かもしれない。


「ほら罰ゲームだからな」
「へ……」


 テーブルの端からジーンズが見えた。その男性は椅子に座り、チョコケーキとコーヒーを注文した。


「探したぞ、ユキ」
「ヤギ……」
「またヤギって言ったな、アホ」


 八木橋だった。黒いダウンジャケットを脱ぎ、背もたれに掛ける。私は手で涙を拭きながら目を擦った。


「ヤ……」


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