雪の足跡《Berry's cafe版》

 あの時は本当に腹が立っていた。いつものようにちょっかいを出す八木橋にムッとしたのとは違う。売り言葉に買い言葉ではない。複数のコに手を付けたり次々と手を出すことを肯定はしないけど、遊ぶにも礼儀はあると思う。他の女の子に手を付けるならせめて私の目の届かないところでして欲しかった。私の人権を石ころのように蹴る八木橋が許せなかった。

 メールを開けると、スキースクールからのメルマガだった。


『明けましておめでとうございま~す! お節に飽きたらカレーは古いですよ! スキー&スノボです!!』


 酒井さんらしいフレーズで顔がほころんだ。メルマガの内容は初心者、中級者、上級者別にワンポイントアドバイスが載っていて、シーズン2回目以降は割引があること、検定も実施していることが書かれていた。卒のない文章に感心しながら画面を送っていると、最後に画像が出てきて、息を飲んだ。


「え……」


 それでは最後にレッスン風景です、と八木橋が小さい女の子を教えてる画像が映し出されていた。


『昨年に引き続きレッスンに参加した菜々子ちゃん。今回も八木橋インストラクターをご指名です』


 そして2枚目の画像では、屈んだ八木橋に“菜々子ちゃん”がキスをしていた。指名料金はいただきません、お気軽に、メルマガ担当酒井、と書かれて、スクールとスキー場のホームページアドレスが載せられていた。


「じゃあ……」


 画像の下には1月1日撮影と記されていて、多分昨日の画像ということになる。

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