たった一つの願いをこめて
髪は伸びきってボサボサ。やせ細った汚れた体とボロボロの衣服。
靴も穴が開いており、足の指先が顔を覗かせていました。

ミリアンは何も言わずに、自分が巻いていたストールを男の子の肩に掛けてあげると、残りのミルク瓶を、その小さな手のひらに握らせてあげます。

男の子は不安気にジッとミリアンを見つめました。

「良いのよ。飲みなさい」


男の子はミルク瓶を、勢い良く飲み干しました。
口を拭い、男の子は飲み干したミルクの瓶だけをミリアンに渡します。


「ありがとう・・・」

男の子はお礼だけ言うと、暗闇の街の中へと走り去っていきました。

ミリアンは男の子が見えなくなるまで、その姿を見送ります。
そして、殻になったかごバッグを左手から右手に持ち替えると、複雑な気持ちを抑えて街を後にしました。
少しだけ吹く風が、ミリアンの心まで冷たくし、家に残してきたルルを思います。


「早く帰らないと・・・」
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