月の絆~最初で最後の運命のあなた~




(あの忌々しい、くそ野郎か)


 直通のため、一分ほどでたどり着いた場所には、人間の香りなんてほとんどない。


 古くて、錆にも似た匂いだけが漂っている。


 そのせいで、何かの罠かもしれないという可能性が、狼呀の頭をよぎった。


 エレベーターを降りて、廊下の先にある、たった一つの扉まで警戒しながら近づく。


 音に集中するが、何の足音もしない。


 でも、穏やかな呼吸が聞こえてきた。


(マリア!)


 その瞬間、吸血鬼に対する警戒なんて、どこかにいってしまった。




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