月の絆~最初で最後の運命のあなた~
問題はもう一つ。
彼女が、あの忌々しい建物から出てきた事だ。
しかし、狼呀はその事だけは、瑞季には話せないと思った。反対するのはわかりきっている。
とはいえ、反対されたからといって、狼呀は諦めるつもりはないのだが。
「まだ何かしたのか?」
「いや……悪い。単なる八つ当たりだ」
「構わないさ。あんたのは短気さは知ってるからな。まあ、頑張れよ。おれに出来る事があったら、何でも言ってくれよ」
大きな欠伸をした瑞季は、ビールの缶を握り潰すと自分の部屋に戻っていった。
まだ真実は分からない。
もしも、考えた事が事実なら、自分は未来に何を持ち込むのか。
窓に近づいた狼呀は、満月には程遠い夜空を見つめた。