月の絆~最初で最後の運命のあなた~




 だから代わりに、自分の腕に爪を立てた。


 はじめてその行為をした時、痛みで我に返り、血のおかげで爆発しそうな感情が消えたことに驚いた。


 それから、同じ感情が浮かぶ度に繰り返す。


 人は、あたしの腕の傷を見たら、リストカットをする人に向けるのと同じ言葉を言うだろう。


“そんなに人の注意を自分に向けたいの”って。


 でも、そんな事の為にしている訳じゃない。


 誰にも、この気持ちはわからない。もて余した感情も、行き場のない感情も。


 あたしは、そのままベットに横になった。


 今は、何も考えたくない。


 目を閉じると、心地のよい闇があたしを迎えた。



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