月の絆~最初で最後の運命のあなた~





 しっかりと治療され、固定されていて痛みは最小限ですんでいる。


 これなら歩けそう。


 室内は木の香りがして、とても優しくて懐かしい気持ちにさせた。


 テーブルも棚も、重みのある木で出来ていて、全てが自然を感じさせる。


 レンや狼呀の家は、現代的な家具や調度品ばかりで、どうにも落ち着かなかった。


 長年住みなれた家ですら、どこか居場所が無い気がしていたのに、はじめて来た家の方が自分の居場所のように感じる。


 なんだか変な気分だ。


「暖かさは大丈夫?」


 絢華さんは、奥にある暖炉の火を見つめていた。


 つられて暖炉を見ると、中のフックにヤカンがぶら下がってる。


 見たことのない光景なはずなのに、なぜか使い方を知っている気がした。





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