月の絆~最初で最後の運命のあなた~
開けた瞬間、中からは知っている香りが漂ってきた。
甘くて、くらくらする香り。
鼻を近づけてきたファングは、鼻にシワを寄せると離れていった。
「もしかして……」
あたしは紙を開いた。
『メリークリスマス、マリア。
君が突然いなくなって、生まれてはじめて寂しいという感情を知ったよ。
だけど、本当の幸せと安息の地を得られたことはよかったと思う。
君のボスに聞いたんだ。
誕生日おめでとう。
クリスマスと誕生日、両方のプレゼントを贈ったから、受け取ってもらえるかな?
なかなか会うことはできないけど、ずっと友達であることは変わらない。
いつでも訪ねておいで。
落ち着いたら、僕も訪ねるよ。
よい一日を……。
愛を込めて。
永遠の友 レンより』
「これって……」
聞きたいことはたくさんあるけど、うまく言葉にならない。
「今日はクリスマスだよ。そして、マリア……君の誕生日でもある」
「……誕生日?」
久しぶりに、慌ててカレンダーを見た。
自然が溢れるこの場所に来てから、日付や曜日の感覚は消えていた。
でも、日めくりカレンダーは、あたしの誕生日を告げている。
「おめでとう、マリア。そして、お帰り」
仲間として、群れの一員として、家族として迎え入れてくれた人々の言葉に、あたしは涙が溢れてきた。