月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「前と変わらない。むしろ悪くなってるかも。さっき、あの時の夢を見たくらいにね」
「変な事は考えるなよ?」
「心配は無用。あの契約書にサインした時からね」
あたしは、レンの手の中から自分の手を引き抜いた。
1ヶ月前、高層マンションから飛び降りようとしていたあたしは、レンに邪魔された。
そして、とんでもない話を切り出された。
自分は吸血鬼で、生きる為には血を飲まなければいけないが、レイプ犯のように人は襲いたくないから、その命を自分の為にくれないかと言ったのだ。
おまけに、
『タダとは言わない。一回3万円を支払うから』
と言ったのだ。
まるで援助交際を申し込む男の言葉みたいで、あたしは思わず笑ってしまった。
昔から嘘に敏感で、人を避けていたけど、レンからは嘘をついている匂いがしない。
信じがたい話だったけど、レンは自分か経営するナイトクラブ兼血液銀行に連れて行ってくれて、手の冷たさだけではなく実際に血を飲むところを見せてくれた。