クリスマスケーキは売れ残るか!?
12月になると、イルミネーションが一層クリスマス色に染まる。
来週がクリスマスイブだ。
ハルはプレゼントを決めたのかな?
気になるけど、嬉しそうに「決めたよ。」なんて言われたら、
「・・・へこむ、」
「あ?なにが?」
「へ?あ、・・・ハル、」
会社帰り、いつもの駅に降り立って呟いた言葉に返事があって、びっくりする。
そこにはちょっとだけ不機嫌な顔をしたハルがいた。
「・・・なんで怒ってるの?」
「あ~。奈々の会社って、そんなに忙しいのか?」
「え?ああ、だって年末だよ?」
「だからって、終電近い時間に帰すなよ。仮にも女の子なんだし、さ。」
「・・・仮、で悪かったわね。」
ちろりと横目で睨んで言った。
心配して言ってくれているとわかっていたけど、そんな優しさに触れてしまうと勘違いしそうになるから、軽く流すつもりだったのに、
「・・・。」
「・・・。」
真剣な瞳をしたハルが私を見ていて動けなくなった。
「どうかした?」
「え?・・・ハルが、」
「ん?俺?」
覗き込むように私を見つめる顔は、いつものハルなのに、
その瞳が優しくて、
私は俯いて慌てて言った。
「っ、な、なんでもない。・・・ハルの会社も忙しいの?ざ、残業だったんでしょ?」
「ああ、どこも年末は忙しいな。」
空を見上げて、うーんと伸びをするハル。
目線を空に上げたままで、ハルが私に言った。
「奈々。」
「なに?」
「今年のクリスマスもどうせ家族と過ごすんだろ?」
「・・・そうだけど、どうせは余計。今年も彼氏いないクリスマスで悪かったわね。」
拗ねたように言えば、クスリとハルは笑った。
「そんな寂しい奈々に朗報。」
「朗報?」
「そう。25日の夜、メシに連れて行ってやるから、」
「はぁ?」
「あけとけよ。」
ハルはそう言って私の前を歩いて行く。
少し進んだところで振り返って、
「早く帰ろう。」
と笑った。