ストロベリー・キス

「美玖ちゃん? 美玖ちゃん、聞いてる?」

不思議そうな顔をするおばさんが私の肩を揺すると、ハッと我に返る。

「徹兄も隅に置けないなぁ。おばさんは徹兄の彼女にあったことあるの?」

「それが一度もなくって。いきなり結婚を考えてる女性がいるって言うんだもの、私もビックリよ」

そうなんだ。私はもうびっくりを通り越して、どう反応していいのかわからないよ。

神様は意地悪だな。何もクリスマスの日に、知りたくもないことを知らせてくれるなんて……。

こんな気持ちじゃ園でのクリスマス会も、笑顔で過ごす自信がない。

だからって、今更休めるわけもなくて。

今日二度目の溜息をつくと、おばさんが私の肩をポンポンと叩く。

「今年もサンタのおじさんは準備万端よ。なんでも今回は、サプライズがあるんですって。私にも教えてくれないの、お前の口は軽いからって。失礼な話しよね」

私が保育園で働くようになってから毎年クリスマス会の日は、永瀬のおじさんにサンタクロースを頼んでいた。

子どもたちは、サンタのおじさんが来るのを楽しみにしている。

そうだよね。そんな日に私が『笑顔で過ごす自信がない』なんて言ってちゃいけないよね。

徹兄のことを考えるのは、今日の仕事が終わってからしよう。

そして『失礼な話しよね』言いながらも怒るわけでもなく、クスクスと笑い続けるおばさんの姿に少しだけ元気をもらった気がした。

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