ご近所恋愛(笑)

(倒れるっ…!)


段ボールの重さに引かれて、そのまま倒れそうになった時、ぐいと反対方向に引かれて、私は何かに包まれた。

恐る恐る目を開けると、そこにはきらっきらの金髪のイケメン。太陽に反射して、少し金髪が眩しいくらい光を放っている。

どうやら、この金髪の人が私を支えてくれたようだった。


「大丈夫やったか?」


「へ?あ、大丈夫です!ありがとうございます!」


冷静になってみれば、かなり恥ずかしい体勢であったわけで、私は飛び上がるように立つ。

へこへこと頭を下げると、その金髪さんはにかっ、と笑った。


「ええよ、こんぐらい。それより、あんたここに引っ越してきたんか?」


「はい、藤咲 菫と言います。よろしくお願いします」


「ほーか、菫いうんやな。俺は水島 楓(ミズシマ カエデ)っちゅうんや。よろしゅう」


「はい!」


よかった。まだまともな人がここにはいるようだ。これ以上、金原さんみたいのがいたら、改めて引っ越しを考える所であった。


「おーい、子猫ちゃーん…って、楓帰ってきてたのか?」


「おう、今日はバイト早めに上がらせてもらったわ」


「そうなのか。あ、子猫ちゃん。荷物大体運び終わったぜ。何ならこのまま家具とか組み立てるの手伝うけど」


「えっ!いいんですか!あ、でも…そんなにしてもらったら悪いし…」


「気にしなくていいっつたろ?これから一緒に住んでくんだからこれくらいどうってことねぇよ」


最初はただのキザなチャラ男かと思っていたが、何て優しい兄貴分なのだろう。これからは兄貴と呼びたい。
そして失礼なことを考えていてごめんなさい。


「お、ほんなら俺も手伝うで。どうせ暇やしな」


「すみません、わざわざ…」


「ええって!それと、俺のことは楓で大丈夫やからな」


やっぱりいい人達だ。少し涙ぐんでしまうくらい。


樹さんや泉さん、楓さんの助けもあって、大体の引っ越しの作業は終わった。
荷物も出し終わったし、手伝ってもらったおかげで家具も運べた。

本当に感謝してもしきれないくらい。

全部終わった頃には、もう日は沈んでいて、いつの間にか夕方になっていた。
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