もうひとつの偽聖夜
小一時間が経っていた。
そろそろ、『君も名探偵になれるか』会場から、シュウたち『ゆめさきドリームズ』の奴らが出てくる頃だ。
他にも大勢いたコバンザメ野郎どもの団体は、皆、「またな~ニセサンタ1号!」と去っていき、どうも、今、この会場にいる団体はシュウたちだけのようだ。
――こりゃ、腹くくるしかねえな。
と、俺は、サンタの格好をしながら、ひさかたの緊張に襲われる。
するとしばらくして、ガヤガヤとガキどもが出没し始めた。
――シュウ!来るなら来い!迎え撃つぞ。
案の定、青の帽子をかぶったシュウが、大勢のコバンザメ養成員共と一緒に、こっちに駆け寄ってきやがった。
「オマエ、ニセサンタだろ?」
養成員たちのセリフは大抵同じだ。
「たりめえだ!」
「わ~い!こいつ本当のことバラしたぞ」
「なんだと?」
「オマエらニセサンタは、本当のこと言っちゃだめなんだぜ」
「そりゃどういう意味だ」
「だって、俺ら子どもの夢を守るために、大人は『サンタはいる』って言わなきゃいけないんだろ?あっちのサンタはちゃんと『俺は本物だ』って言ってたぜ?」
――サンタ2号の奴、なにガキに嘘ついてんだ?
「ばかやろー俺はホントのサンタなんかじゃねえよ!ただのバイトだよ」
「わーい!ニセサンタ!オマエ、後で叱られるぞ?」
「なんだこのガキ!おめえ、今何年生だ?」
「五年生だよ」
「五年にもなって、そんなことにこだわってんじゃねえよ!馬鹿じゃねえのか?俺が、本物のサンタなわけねえだろ。そんなハッタリ噛まされて、バカ面して喜んでんじゃねえって話だ」
「なんだよ。喜んでなんかないさ。でもオマエ、変なニセサンタだな、おもしれーよ」
そのガキは、そう言って、俺のケツを蹴り上げる。
「こらてめえ、褒めてんのか、なめてんのかどっちだ!どっちかにしろっ」
その言葉を合図に、また新コバンザメ軍団が出来上がった。