もうひとつの偽聖夜
新コバンザメの襲撃が始まった。
シュウも、間抜けヅラを真っ赤に火照らせ、俺の周りではしゃいでいる。
――よし、シュウの奴め、まったく気づいていない。ちょろいもんだぜ。
そうして、新コバンザメ軍団は、ひと時俺と戯れると、一斉に『おもしろ実験』会場に向かっていった。
俺は、誰もいなくなったホールで腰を落とし、やれやれと、壁にもたれるように座り込んだ。
12月も終わりのこの時期は、日の落ちる時間も早い。やおちんのイラストが一面に書きめぐらされた窓は、すっかり、街の灯りを映し出している。
――後、30分か。
コレが終われば、8000円をゲットし、無事に赤ちょうちんが待つ飲み屋街に繰り出す予定だ。俺は、真っ赤なとんがり帽子を脱ぎ、すっかり帰り支度を考えていた。
すると――
――やばい、シュウだ。
シュウが、まだ『おもしろ実験』は始まったばかりだというのに、その会場から抜け出してきやがった。
俺は、目を合わせないように下を向く。そして、慌ててヒゲの位置を確認すると、急いでとんがり帽子を深々とかぶった。
――あっちいけ!オマエのサンタはサンタ2号だ。
祈るように、シュウの気配に気を配っていると、まっすぐにこちらに向かってくるシュウの足音が聞こえる。
――な、なんだと?なにやってんだ!あっちだ!あっちにいけ!
「サンタ1号?」
「な、なんだね?」
俺は、思わずこわ声で微笑んでいた。