もうひとつの偽聖夜
「ねえ、サンタ1号。ちょっとお願いがあるんだ」
シュウは、いつになく神妙な顔で話かけてきた。
「お願い?ぬあ、なんのなのかね?すお…それは」
「うん、あのね、さっきサンタ1号、『俺は偽物だ』って言ってたよね?」
――てか、そんなことより、俺ときたらどうも声を意識しすぎて、さっきから噛みまくっているじゃねえか。
「う、うん。そうだね。そ、そう言ってたぬえ…いや、ね」
「じゃあ、本物のサンタはいるってことなんだよね?」
「は?いや、あのその、そ……、そういうことにぬあ…、なるかな?」
――な、なんでそうなる?ってか、シュウ、オマエ、ひょっとしてまだ『サンタはいる派』なのか?
いくら俺でも、『サンタはいる派』の夢を砕くことはできねえ。
シュウは、俺の横に体育座りで座り、俺の顔を覗き込んだ。
「じゃあサンタ1号は、本物のサンタに会ったことある?」
「へ?会ったこと?あ、あるさ、わ、私はサンタ1号だからぬあ…な」
――何言ってんだ俺。
「凄い!やっぱりいるんだよね!僕もそう思ってたんだ。だけど、クラスのみんながサンタなんていないって言うから。いつもプレゼントくれてるのはパパとママだって」
「………」
――残念ながらそれが正解だ、シュウ……。
俺は、ひたすら、消えてくれることを願いながらも、シュウの話に耳を傾けていた。