もうひとつの偽聖夜

 サンタが本当にいるのかどうか――
 それは、小学生なら誰もが経験する、『オトナへの階段会議』だ。ソレを乗り越え、真実を知り、ガキは大人になっていくんだ。

「だけどね、僕もそうかもしれないとは思ってるんだ。だって、いつも、クリスマスの前になると『欲しいものをサンタさんへの手紙に書いて』って言うでしょ?それって、パパとママが読んで、プレゼントを買いに行ってるんじゃないかなって思うんだ」

――なんだよ、わかってんじゃねえか。

「なのに、シュ、いや、君は、どうしてサンタはいるかどうかなんてきにしてるんどぅあ・だい?」
「だって……。パパが言うんだ。パパが高校生の時、となりのお兄ちゃんのうちの屋根にサンタがいたって」

「なにい?」
「うん、となりのマサ兄のうちの屋根にね、サンタがいたんだって!」

 シュウのバカ面が、一層輝きを増した。

「マ・マサ兄?」
「うん、僕んちの隣のうちのお兄ちゃんだよ。そのマサ兄が小さい頃、サンタがほんとに来てたんだって!」

「そ、そのマ、マサ兄もそう言ってるのかい?」
「ううん、マサ兄に前に聞いてみたら、『バカじゃねえの』って。てか、マサ兄ってほんとバカなんだ。だからきっと覚えてないんだよ。でも僕のパパはすっごくカッコイイから絶対に嘘はつかない!」

――コノヤロ、覚えておけ?つうか、お前のオヤジだって若い頃は俺と同じくバカだったんだよ!オメエはソイツのバカ息子だよっ

 しかし――

「そ、それはすごいね。じゃあ、必ずいるね、サンタは」


 俺は、そうとしか言い様がなかった。

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