もうひとつの偽聖夜
そのバカ息子シュウが話を続ける。
「だからね、僕、実験しようと思うんだ」
「実験?」
「うん、実験。僕は今年のクリスマス、パパとママには「グローブが欲しい」って書いた手紙を渡した。だけど、本当に欲しいものじゃないんだ。本当はサッカーボールが欲しいんだ」
「なんだよそれ、シュウ!おめえ、野球小僧じゃねえのかよ?」
俺は、思わずマジに訊いていた。
「へ?『シュウ』って、なんでサンタ1号、僕の名前知ってんの?」
「い、いや、わ・私はサンタ1号だからね、本当は、君たちの名前を本物のサンタから教えてもらってるんだ」
「へ~そうなんだ」
――相変わらず間抜けだな、シュウ。そんな話信じてんじゃねえよ。
しかし、俺はそんなこと顔には出せない。
「そんなことより、き、君は、野球じゃなくてサッカーがしたかったのか?い?」
「うん。本当は野球は好きじゃない」
「だから、サンタさんにサッカーボールを?」
「うん。サンタ1号!この手紙を本物のサンタさんに渡してよ。それで本当にサッカーボールが届いたら、本当のサンタさんがいるってことでしょ?」
「あ、でもいや、それはサンタ2号に頼んだらどうかな?」
そんな面倒な案件、持ちかけられたらたまったもんじゃない。
「2号にはさっきお願いしたよ。だけど、サンタ2号は、ママに渡しなさい、ってゆうんだもん。あいつは2号だからか、本物のサンタを知らないのかもしれない」
――なにやってんだ2号!子供の夢を壊すんじゃねえよ。そこはだまって受け取っておけばいいんだよ。ガキなんてそれで気が済むんだから。後は適当に引率者に渡しておけばいいんだよ。ったくもう。
時折まっとうな思考と戦う俺がいた。