もうひとつの偽聖夜
昼過ぎ、一台の大型バスがイベント会場に到着した。
――なんだ、また団体かよ。
俺は、昼休憩を終え、ほとほとやる気のない態度を醸しだし、所定の位置についた。
バスから降りてきたガキどもは、数人の大人たちに誘導され、イベント会場のホールに整列する。
その嬉しそうに目を輝かすガキどもを冷めた目で見つめる俺は、ふと、その引率者らしき、グラサン親父に目を止めた。
――ん?このオッサン、どっかで見たことあるな。
「いいかお前ら!ここではずっと自由行動だ。好きなところを回ってきたらいい。だけど、時間厳守だぞ。5時にこのホールに集合だ。いいな?」
――なんだよなんだよ、この声、聞いたことがあるじゃねえか。
俺は、その団体の旗に目をやった。
『ゆめさきドリームズ』
――な・なにい?
俺は、恐る恐る、その馬鹿ズラで整列するガキどもの顔を一人一人確認した。
――シュウだ!
あのまぬけヅラはシュウに間違いない。
この『ゆめさきドリームズ』は、シュウが所属する野球チームだ。
俺は、慌てて、そこらに散らばっているコバンザメたちに集合をかけた。