もうひとつの偽聖夜

 昼過ぎ、一台の大型バスがイベント会場に到着した。

――なんだ、また団体かよ。

 俺は、昼休憩を終え、ほとほとやる気のない態度を醸しだし、所定の位置についた。

 バスから降りてきたガキどもは、数人の大人たちに誘導され、イベント会場のホールに整列する。
 その嬉しそうに目を輝かすガキどもを冷めた目で見つめる俺は、ふと、その引率者らしき、グラサン親父に目を止めた。

――ん?このオッサン、どっかで見たことあるな。

「いいかお前ら!ここではずっと自由行動だ。好きなところを回ってきたらいい。だけど、時間厳守だぞ。5時にこのホールに集合だ。いいな?」

――なんだよなんだよ、この声、聞いたことがあるじゃねえか。

 俺は、その団体の旗に目をやった。







『ゆめさきドリームズ』








――な・なにい?

 俺は、恐る恐る、その馬鹿ズラで整列するガキどもの顔を一人一人確認した。

――シュウだ!

 あのまぬけヅラはシュウに間違いない。
 この『ゆめさきドリームズ』は、シュウが所属する野球チームだ。
 俺は、慌てて、そこらに散らばっているコバンザメたちに集合をかけた。


< 8 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop