夏月一会

「誰が…そんなその辺の女と……お前の相手は私が決めた……私が認めた人間とじゃないと許さないぞ!」


浩司の彼女というのは、ごく普通の一般家庭の娘だった。
先代の言う、先代が認めた人間というのには、程遠かったのだ。


「お前には松本家の人間としての自覚はないのか!」


その言葉に、浩司は顔を上げることはなかった。



「僕は……そんなものよりも、彼女が……彼女との子供が大切なんです」

ゆっくりと、浩司は立ち上がった。


「そんなものだと…?浩司!お前、自分が何を言ってるのか分かってるのか!」


「僕には……初めから無理だったんです。この家のしきたり通りに生きることは…」

浩司は顔を上げた。その目には、涙が溜まっていた。


「やっぱり、この家は、義兄さんみたいな優秀な人が継ぐべきなんです。…僕には、できない」



その言葉を最後に、浩司は、ほぼ勘当同然に、松本家を出ていった。


浩司の彼女の、大槻家の方は、娘の妊娠のことも、浩司のことも、理解し受け入れた。

そのお陰で二人は結婚し、子供を産むことができた。


その子供が麗海だった。



そして、同時に松本家では、慶一が正式に松本家の後継者ということが決まった。

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