婚カチュ。


如才ない態度にお礼を言うことも忘れ立ち尽くす。

さすがホストだ。まとっているオーラがほとんど物質的な質量をもって迫ってきた。気を抜くと吹き飛ばされそうだと思うほどに。
 

数百人がひしめく会場内に、銀色のタキシードはとても目立つ。
離れた場所で別の男性と談笑をはじめる彼を見やり、わたしは広瀬さんに視線を戻した。


「あの方と……お知り合い、なんですか?」
 

ためらいつつ尋ねると、


「……まいったな」


そう言って、広瀬さんはため息をついた。


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