婚カチュ。
間違いない。
女の勘というやつだろうか。
こんな場面で発揮されるとは、なんて悲しい機能なんだろう。
花咲く機会を与えられなかったつぼみは、塊のまま、きっと朽ちてしまう。
それならば。
「副業だって、大変な仕事ですよね。本来のお仕事の邪魔にならないんですか」
強引に頼まれたって断ればよかったのだ。
そんな質問をぶつけて、広瀬さんの気持ちの大きさを量ろうとした。
彼が、桜田さんから一方的に寵愛を受けている可能性を見つけようとしている。
気持ちのあらを探そうとするなんて、好きという感情はなんて独りよがりで厄介なシロモノだろう。
そうやって彼が桜田さんのほうを向いていないことを確認しようとして、わたしは地雷を踏みつけたことを知った。