婚カチュ。
ずいぶん可愛いドリンクを飲むんだなと思っていたら、どうやら糖分を補給していたらしい。
「仕事を終えた時点で若干ふらついていたんですが、すでに約束の時間だったので。さっきはあなたに会いたい一心で意識を保っていたようなものです」
そう言って笑ったあと、もう一度「申し訳ない」と謝られた。
そう、彼はタックルをしたのではなく、無我夢中で歩を進めているうちに足元の石につまずいてわたしに向かって倒れこんできたのだ。
戸田さんは残りのチョコレート・ドリンクを一気に吸い上げると、大きくため息を漏らした。
なんだか気の毒になる。
「休日でもいつもそんなにお忙しいんですか?」
彼は苦笑しながらテーブルの上に指を組んだ。
「平日は意外と仕事が進まないんですよ」
ごつごつと節くれだった、長い指だ。