婚カチュ。
「依頼人や相手方弁護士と電話でやりとりしたり、後輩や事務員からの質問に答えたりしていると、集中して書面に向かう時間がなくてですね」
「書面?」
「参考資料を読んだり、答弁書を書いたり」
「はあ、大変なんですね」
「まあ仕事ですからね。中には事務所に泊まりこんでる輩もいますよ。こんな生活をしているので、弁護士って意外と出会いがないんです」
「そうなんですか? 弁護士さんってモテそうですけど」
わたしの言葉に彼はいたずらっ子のような顔をする。
「知り合いには女性にモテたくて弁護士になったっていうヤツもいますが、私は職業ばかりに興味をもたれるのはちょっとイヤだな」
なんとなく責められているような気持ちになって肩をすくめた。
「す、すみません……」
「ん? なんで二ノ宮さんが謝るんですか」
きょとんとする彼から目を逸らす。
「わたしも、お相手の職業を重視するタイプなので」
「そうですか? そのわりにはお見合い合コンでちっともこちらを見てくれなかった」