婚カチュ。
その特技を活かし、会員それぞれに見合った適切なシミュレーションを行い、双方が満足いくような縁結びをこれまでにいくつも成功させているらしい。
スタッフは広瀬さんを含めてまだ3人しかいないけれど、最近の婚活ブームも手伝って会員数は右肩上がりだそうだ。
「そういえば財務の青山さん、今度結婚するらしいよ」
飲み物を焼酎に切り替えて希和子が勤務先の話をはじめる。
わたしは銀杏串にかじりついたまま固まった。頭のなかにモンタージュのようにいくつもの顔が浮かび上がり、おかっぱ頭の女性を映して止まる。
「え、あの青山さんが?」
「うん。お相手は習い事サークルの仲間だって」
財務企画部の青山さんはわたしたちと同期入社の女性でなにかと目立つ子だ。
外見で目を引くというより、その言動が変わっている。
どこかの婦人活動家かと見紛うほどに男女平等を謳い、上司や同僚の男性に敵意をむき出しにしているそうで、そういった話があちこちから聞こえていた。
同期のあいだではただの男嫌いなのではないかという噂が広まっていただけに、彼女が結婚するという話は衝撃だった。
「そうなんだ……青山さんが」
焼いた銀杏のほろ苦さが口の中に広がる。