婚カチュ。
「三十路直前の駆け込み乗車って感じ。意外よねぇ」
希和子はのんびりと焼酎グラスを傾けた。ほんわかとした彼女の雰囲気に薩摩芋焼酎はとてもミスマッチだ。
わたしよりもよっぽど男前な性格の希和子は、学生のころから付き合っていた彼と去年入籍を果たしたばかりだった。
「習い事のサークルか……」
噛み締めるようにわたしが言うと、希和子は笑った。
「シイちゃんはおとなしくイケメンアドバイザーに見繕ってもらいなよ」
「え、でも」
彼女の薬指で既婚者の余裕が光る。
「たぶんシイちゃんは社会人サークルに入っても結婚できないと思う」
「な、なんでよ」
断言され頬をふくらませると、
「恋愛体質でもないのに夢見がちだから」
あーメンドクサイ、と言っておおげさに肩をすくめてみせた。
「どういう意味?」
聞き返すわたしに、希和子は含むように言った。
「とりあえず、好きになれる相手を探さないとね」