婚カチュ。
5 ◇ ◇ ◇
「いやーまさかこの時間に先輩から返信もらえるとは思いませんでした」
「わたしもまさかバイクでここまで来るとは思わなかったわ……」
朝まで営業しているダイニングバーのソファ席で、松坂翔太は「おつかれさまっす」とビールのグラスを掲げた。
「でもなんでこんな時間にこんな場所に? まさか残業じゃないっすよね」
サラリーマンの戦闘服を脱ぎ去った後輩を見るのは久しぶりだ。
ライダースっぽいデザインのニットにデニムという簡単な格好だけれど、スタイルがいいせいか、それともさりげないこだわりがあるのか、なんとなく洒落ている。
「友達と飲んでたの。わたしだけ終電逃しちゃって」
「へえ、そうなんすか。いいタイミングでメールしたんだなー俺」
満面の笑みを浮かべ、松坂はデニムの足を組んだ。