婚カチュ。

5  ◇ ◇ ◇


「いやーまさかこの時間に先輩から返信もらえるとは思いませんでした」

「わたしもまさかバイクでここまで来るとは思わなかったわ……」 
 

朝まで営業しているダイニングバーのソファ席で、松坂翔太は「おつかれさまっす」とビールのグラスを掲げた。


「でもなんでこんな時間にこんな場所に? まさか残業じゃないっすよね」
 

サラリーマンの戦闘服を脱ぎ去った後輩を見るのは久しぶりだ。
ライダースっぽいデザインのニットにデニムという簡単な格好だけれど、スタイルがいいせいか、それともさりげないこだわりがあるのか、なんとなく洒落ている。


「友達と飲んでたの。わたしだけ終電逃しちゃって」

「へえ、そうなんすか。いいタイミングでメールしたんだなー俺」
 

満面の笑みを浮かべ、松坂はデニムの足を組んだ。

< 149 / 260 >

この作品をシェア

pagetop