婚カチュ。
わたしはいつか希和子に「シイちゃんは夢見がち」だと言われたことがある。
条件も譲れないけど、結婚するなら好きなひとがいい。
そんなふうに中途半端で夢見がちだから、これまでいい人が見つからなかった。
それでも、やっぱりわたしは好きなひとと恋をして結婚したい。
「わたしはそうは思いません」
2杯目のビールに手を伸ばし、わたしは正面から広瀬さんを見つめた。
「うちの親、いまでもラブラブで子ども的にはうんざりなんですけど、それでも見ていて幸せな気持ちになります。いきなりケンカしてたり無視しあってたり、かなり面倒くさいこともあるけど、長い目で見たら家族みんなですこしずつ壁を乗り越えてきて、団結力も増してる気がするし」
世渡り下手なんて母親に馬鹿にされて腹が立つこともあるけれど、両親が円満だからこそ、わたしはきっとのんびりと成長してこられた。
「少なくともわたしは好きになった人と恋をして結婚したいです。自分の子どもが生まれたらそれだけで愛しいのに、それが自分と好きな人との子どもだったら唯一無二の存在じゃないですか。そんなことを想像するだけですごく幸せな気持ちになれる」