婚カチュ。
会社の後輩に業務内容を説明するように表情を変えずに話しながら、内心では自分を見つめていた。
ああ、そうか、と思った。
わたしはおめでたい人間なのだ。
理想ばっかりならべて、妥協ができなくて、それでも夢を見続けている。
広瀬さんはぽかんと口を開けていた。それから思い出したように笑いだす。
「そんな真顔で夢を語るとか。ギャップがすごいな」
今日の広瀬さんはよく笑う。メガネをかけていない彼は表情がとてもやわらかい。
「理想が高いくせに、よく言いますね」
揶揄するように言って、焼酎グラスの氷をからりと揺らした。
「でも、二ノ宮さんと結婚すると、あなたみたいな子どもが生まれるのかな」
まっすぐ向けられた視線に、胸が高鳴る。
「それはちょっとうらやましい」
低く通る声に、胸が詰まった。