婚カチュ。
腕時計で時間を確認してゆっくり首を回す。
集中力を高めてテンプレに対応していない変則注文の請求書と納品書を5件分、一気に仕上げる。
見直しをして印刷したものを他の書類とまとめて発送担当の女の子に渡すと席を立った。
コーヒーでも買ってくるつもりで引き出しの財布に手を伸ばしたとき、スマートフォンが新着メールを受信していることに気付いた。
差出人の宛名を見て、とたんに肩が重くなる。
奇しくも今日は彼に買ってもらったハンカチを携帯している日だった。
ポケットからさくら色のそれを取り出すと、余裕のある大人の微笑が思い浮かぶ。それから目元を覆って泣いている、ちょっと情けない姿も。
戸田さんはとてもいい人なのに、彼のことを考えると心が沈んでいくばかりだ。