婚カチュ。


仕事が終わってからまっすぐにフェリースに向かった。
いつものようにテナントビルの5階で降り立ち、花に囲まれた扉をくぐる。
 
いま迷っていることを、アドバイザーに正直に話してみようと思った。

広瀬さんへの想いはともかく、気持ちが戸田さんに向いてないのに付き合い続けるなんて、やっぱり真剣な彼を騙しているようで気が重い。


頭上で扉のベルが涼やかな音を立てる。
いつものようにわたしのアドバイザーが出迎えてくれることを期待したのに、彼は出てこなかった。
それどころか、なにか異様な雰囲気が漂っていることに気付く。
 

フロアには3人の人間がいた。

椅子に座り青い顔でノートパソコンを操作している女性スタッフと、その傍らに立って眉間にしわを寄せている広瀬さんと、それから――


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