婚カチュ。


「なんでだよ。俺はこの人がいいんだって」

「ですから、この方はすでに交際している会員男性がいらっしゃるので、現在はご紹介をストップしていて」

「だからそこが納得いかないんだって。俺が申し込んだ時点でまだ交際成立してなかったよね」

「ですからそれは――」
 

クレームをつけてきた会員に広瀬さんが対応しているのだということはわかる。でも、そのクレーマーが問題だった。


「ちょっと……なんであんたがここにいるの」
 

わたしが声をかけると、スーツ姿の男がはっとしたように振り返った。
わたしを見てしかられたレオみたいにしおれた表情を見せる。


「先輩……」

「ここ、結婚相談所だよ」
 

営業で顧客先に来ているのかとも思ったけれど、それにしては態度がおかしい。松坂は取引先の人間にケンカを売るような話し方はしない。
 
肝をつぶしているわたしに、後輩は引きつり笑いを浮かべた。

< 181 / 260 >

この作品をシェア

pagetop