婚カチュ。
金色のバッジは花びらの形をしていて真ん中に天秤の模様が描かれている。
意外にもメッキ加工らしく、花弁の金が剥がれて内側の銀が覗いていた。
「それ、落とさないようにね。失くすと面倒なんだ」
意地悪っぽい口調で言うと、戸田さんは地下鉄の出口から外を見回した。
「さて、何を食べるかな」
「戸田さんのいちばん好きなお店はどこですか?」
目を向けると、
「承知しましたお嬢さん」
そう言って、彼はわたしの手を取る。強引な仕草に、心臓が一度脈打った。
手を繋いだまま、大きな神社に沿って暗い歩道を歩く。
戸田さんの大きな手から伝わるぬくもりが、なんだか後ろめたい。
早足で歩く今日の戸田さんは、少し無骨な雰囲気をまとっている気がした。