婚カチュ。



「最初はちゃんとした店に行こうと思ったんだ。だけど一刻も早く確認したいことがあって。ゆっくり食事をしていられる心境ではなかったから。申し訳ない」
 

視線を逸らす彼に胸が騒ぐ。


「ここが私の働く事務所です」
 

そういうと、彼はコンビニが入っている建物の上階を指差した。
夜空にそびえる灰色のテナントビルには、縦に各階に入った店舗の看板が取り付けられている。下から6つ目の場所に法律事務所の名前が書かれていた。


「行こう」

「え?」
 

固まるわたしを振り返り、彼は「大丈夫」と微笑んだ。


「今日はみんな帰ったから、誰もいない」




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