婚カチュ。
戸田さんはもしかすると、わたしのアドバイザーから聞いたのかもしれない。
わたしが、戸田さんとの交際に後ろ向きであるということを。
ふと、彼が思い出したように言った。
「申し訳ない、こんなところに連れてきて」
「え、いえ……」
自分で淹れた鉄観音のお茶を啜り、まっすぐわたしを見た。
「どこかの店に入ると、その、涙腺に自信がなかったものだから」
「え……」
そして弁護士先生は表情を引き締めた。
「松坂翔太という男性を知っていますか」