婚カチュ。
空虚な気持ちになりながら、彼の濡れた髪に指を差し込む。
ブラがあらわになるとからだを下げ、下着のうえからわたしの胸に顔を沈めた。
熱い吐息が谷間を湿らせる。
自分がいま何をしているのかという意識はなかった。
ただ流れに身を任せている。それは考えるよりもずっと楽だった。
広瀬さんのことも、戸田さんのことも考えない。
いまはただ、この哀しげな男の激情を受け入れる――
「俺……」
松坂が不意につぶやいた。
胸に顔を押し付けたまま動きを止め、くぐもった声を漏らす。
「……大学に入ったとき、ひとりで地方から出てきて、めちゃくちゃ不安で、なかなか友達もできなくて、すげー寂しくて」
彼は肩を震わせていた。
「そんなとき、サークルに誘ってくれたのが先輩なんです。ただの、新入生獲得のための勧誘だったけど、俺、それが嬉しくて、すぐに入ることに決めて」
ベッドに仰向けになったまま、わたしは視線を下げた。
松坂の湿った髪がわたしのむき出しの鎖骨を濡らしている。