婚カチュ。


「……それで、今日はどうなさいました」
 

メガネで美貌を抑えた鋼鉄の無表情は、どこまでも冷たい。わたしは深く息を吸った。


「戸田さんから、プロポーズされました」
 

わたしの告白に広瀬さんが目を見開く。
こげ茶色の虹彩に照明が映りこむ。


「……それで?」
 

まっすぐ見つめてくる彼と目を合わせることができず、わたしはうつむいた。



「OKしました」
 

ガラスの部屋に短い沈黙が漂った。
 

わたしの結婚が決まれば広瀬さんの仕事がひとつ片付く。
おそらく彼のアドバイザーとしての実績も上がるだろう。
 
会員同士をくっつけるのが、彼の仕事なのだから。


そして広瀬さんの抑揚のない声が聞こえた。


「おめでとうございます――って言えば満足ですか」



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