婚カチュ。
「――見たわよ」
「さ、桜田さ」
恐怖に凍りつくわたしをじっと見つめ、
「ていうか、丸見えだったわ。いちゃつくんならブラインドぐらい下げなさいよ智也くん」
すました顔で広瀬さんを見やった。
「え……」
怒ってない?
広瀬さんとのキスで脈動した心臓が、違う種類の鼓動を響かせる。
何がどうなっているのかわからない。
「あと、紫衣ちゃんには退会してもらわなくていいわ。うちの規則だと余計な違約金をもらうことになっちゃうから」
「ああ、そう」
広瀬さんがつまらなそうに答えて、わたしに向き直った。
「けど退会してもらう。違約金なら俺が払うから。これ以上紫衣さんに男が寄ってきたら困る」
「あ、あの」
当事者であるわたしを置いてきぼりにして、彼らはどんどん話を進めていく。