婚カチュ。
「俺は、結構早い段階からあなたのことが好きでした」
「えっ……」
胸が強く震える。
彼は邪魔だというようにメガネを外し、胸ポケットにしまった。そんな仕草ひとつだけで気持ちが高ぶる。
「すべては母親に、俺好みの女性が登録したから担当しないかと打診されたことがはじまりです。俺が女性にうんざりしてた時期だったので、それをなんとかしようと思ったんでしょう。実際、俺はあなたの天真爛漫さにすっかり魅了された。顔はもともと好みだし、なにより正直で飾らないところに大いに惹かれた」
鼓動が激しくて呼吸がうまくできない。
彼にまっすぐ見つめられ告げられた言葉が信じられなかった。
広瀬さんが、わたしを好きだった、なんて。
「アドバイザーの仕事はつまり、会員のことを深く知ることからはじまります。あなたのことを知るにつれて、俺はどんどん好きになりました。その反面、ハラハラもしていた。なんせ結婚相手を見つけてあげるのがアドバイザーとしての仕事だったので」
広瀬さんの口から、信じられない言葉が次々と紡ぎ出される。